もくじ
はじめに
以前の記事で Salesforce Marketing Cloud の製品概要や特長をご紹介いたしました。
今回は 同じくSalesforce, Inc.(以下、Salesforce社) が提供するリアルタイムパーソナライゼーションツールである、Marketing Cloud Personalization (マーケティングクラウド パーソナライゼーション)について、ご説明いたします。
全4回に渡って Marketing Cloud Personalization の概要説明から導入方法の紹介を行っていますので、ぜひ最後までご覧ください。
第1回 → Marketing Cloud Personalization の全体概要(本記事)
第2回 → Marketing Cloud Personalization の初期設定とオブジェクトの設計方法
第3回 → Marketing Cloud Personalization のサイトマップとキャンペーン開発
第4回 → Marketing Cloud Personalization のデータ連携とテスト方法
Marketing Cloud Personalizationとは?
Marketing Cloud Personalization とは、Salesforce 社が提供するリアルタイムパーソナライゼーションツールです。
最初に、この”リアルタイムパーソナライゼーション”について、何を実現できるか簡単にご説明いたします。
- Webサイトやモバイルアプリ等における顧客データの統合
顧客は Web サイトやモバイルアプリ等の様々なチャネル(タッチポイント)を介して企業のサービスを利用しています。
しかし、Webサイトやモバイルアプリにおける顧客の行動履歴(ログデータ)は分散して管理されており、ほとんどの企業は活用できる状態になっていません。
Marketing Cloud Personalization のトラッキング機能を利用することで、Web サイトやモバイルアプリといった異なるチャネルをまたいで各顧客の行動履歴を収集し、統合的な顧客プロファイルを作成することができます。 - 顧客インサイトの理解とセグメンテーション
統合された顧客プロファイルの作成ができると、「どの顧客が?」「いつ?」「どのチャネルで?」「どのような行動(閲覧、クリック、購入等)をしたか?」という情報を把握することができます。これにより各顧客に関する深いインサイト(洞察や発見)を得ることができます。
また、この結果を踏まえて顧客をセグメンテーション(区分)することができるため、顧客の状態に合わせた施策を実行することが可能になります。 - パーソナライズされた施策の実行
最適化された顧客セグメンテーションに対して、Webサイト、モバイルアプリ、メール等での複数のチャネルで個々の顧客に合わせた最適な施策を実行することができます。
例えば、Webサイト上での顧客に合わせたバナーやメッセージの出し分けや、レコメンデーション(「こちらを購入した人は…も購入しています」等)を行うことができます。
その他、顧客の状態やアクションに合わせてモバイルアプリへのプッシュ通知やメール送信によるキャンペーンの実施などが行えます。
上記が"リアルタイムパーソナライゼーション"で実現できることになります。
※Marketing Cloud Personalization は、Marketing Cloud Engagement の利用が必要となるサービスです。メール送信やモバイルアプリへのプッシュ通知等の施策の実行は Marketing Cloud Engagement(マーケティングクラウド エンゲージメント) のJourney Builder(ジャーニービルダー)と連携させて実現するものになります。
※Marketing Cloud Personalization は、以前は Interaction Studio や Evergage という名称で提供されていました。

Marketing Cloud Personalizationの特徴
それでは、Marketing Cloud Personalization の特長について、上記で触れたものに加えて少し詳しく説明していきます。
- 統合された顧客プロファイル
Marketing Cloud Personalization は、顧客のWebサイト閲覧・行動履歴、商品やサービスの購入履歴、モバイルアプリでの行動等の複数の情報元から顧客に関するデータを収集して分析することができます。
収集された情報は"顧客ID"などの顧客を一意(ユニーク)に特定する識別子を利用して統合することができます。これにより各顧客の統合されたプロファイルの作成が実現できます。
この統合された顧客プロファイルにより、顧客の好み、行動、興味など様々な角度からインサイトを得ることができます。
また、顧客の行動は時系列で確認することもできるため、ユーザーが「どのページを閲覧しているか?」「何に困っているのか?」等の状況把握にも活用可能なため、マーケティング用途だけでなく、カスタマーサポート用途でも活用することができます。 - リアルタイムなデータ分析
前述の通り、Marketing Cloud Personalization は、リアルタイムにデータを収集、および分析することができるため、顧客の好みの変化に迅速に対応できるようになります。
また、訪問者数(新規や再訪問)やコンバージョン数、クリック数のレポート、キャンペーン毎のパフォーマンスレポート、収益状況のサマリーレポート等、様々なレポートを視覚的に確認することができます。 - マルチチャネルの顧客エンゲージメント
”顧客エンゲージメント”とは、企業と顧客間の信頼関係を指しています。
昨今、顧客は企業に対して、自身の利用頻度の高い最適なチャネルを介して、最適な情報を取得したいというニーズが高まっています。
Marketing Clouod Personalization は、Webサイト、モバイルアプリ、メール等のチャネル全体を通して顧客を把握できるようになります。
あるチャネルでの顧客のやり取りから収集した情報を使用して、オンラインかオフラインかに関係なく、他のチャネルを活用して顧客へのアプローチをパーソナライズすることができます。
たとえば、顧客が Web サイトで製品を閲覧した場合、その情報を使用して、その製品に関連するプロモーションを提案するパーソナライズされたコンテンツをメールで送信することができるようになります。
- 機械学習による予測
Marketing Cloud Personalization は"Einstein" と呼ばれる機械学習アルゴリズムを使用した顧客の行動予測を行う機能があります。
この機械学習機能を活用することで、顧客にとって関連性の高いコンテンツを配信し、顧客が検討や行動を止めてしまったタイミングからシシナリオ施策等を開始することができます。
Einstein の機能を活用して、最適なアクション、製品、コンテンツ、その他のサービスに対するパーソナライズまたはレコメンデーションを実施することができます。

Marketing Cloud Personalizationの主な機能
Marketing Cloud Personalization には、以下に挙げるもの以外にも様々な機能がありますが、ここでは一般的によく利用される機能について説明いたします。
- レポート(Reports)
収益、訪問、注文、訪問ごとの平均注金額、コンバージョン率の概要等、様々な情報を視覚的に確認することができます。
また、インプレッション数、新規訪問者と再訪問者、アクション (購入、閲覧、カート追加・放棄) などの指標を通じて、キャンペーンのパフォーマンスに関する詳細も確認することができます。これらは日付の範囲指定ができ、時系列で確認することができます。
ここでは全てご紹介することはできませんが、その他にも Markeitng Cloud Personalization はマーケティング施策の成功を支援する様々なレポートを確認することができます。
- チャネルとキャンペーン(Channels & Campaign)
この機能は Marketing Cloud Personalizationでも中核となる機能となります。
Webサイト、モバイルアプリ、メール等のチャネルにおけるキャンペーンや、トリガー(ユーザーの行動イベント)をベースとしたキャンペーンなどに関する各種設定を行うことができます。
この機能で、各顧客セグメントや顧客の行動イベントをターゲットとしたリアルタイムなパーソナライゼーション施策を作成することになります。
但し、柔軟かつ高度なキャンペーンを実施するには、Webサイトの行動データを詳細に捕捉するためのプログラム開発が必要となることや、外部システムとのデータ連携に必要なシステム開発が必要となる等、より高度なスキルが必要になります。
- 観客(Audience)
この機能は顧客や訪問者のセグメント(区分)を作成する場所です。
このセグメントは各施策の実行対象を決定するものとなるため、 Markeitng Cloud Personalization にとって非常に重要な機能となります。
顧客の属性情報や Web サイトやモバイルアプリの行動履歴(閲覧やクリック等のアクション)、お気に入りやカート履歴、購入履歴等々、様々な情報をもとにセグメンテーションすることができます。
例えば、「特定の商品を購入した(あるいは購入していない)顧客のみに特定のキャンペーン施策バナーを表示する」、「特定の商品ページの訪問数が多い顧客のみにレコメンデーションコンテンツを表示する」といったシチュエーションにセグメントを活用します。
- カタログ(Catalog)
カタログはカタログオブジェクトとも呼ばれ、一般的には情報を管理するテーブル領域のようなものを指します。
製品、カテゴリ、ブログ、記事などの標準的なカタログオブジェクトが用意されていますが、利用者側で自由に定義できるカスタムオブジェクトも作成することができます。
必要に応じて、各オブジェクトを相互にリレーション(関連付け)させることができるため、様々なニーズに応えることができます。
このカタログオブジェクトの設計も高度なデータモデリング(データ設計)やデータ連携に関する知識やスキルが求められます。
- 機械学習(Machine Learning)
Einstein と呼ばれる Salesforce 社の機械学習機能を利用することができます。
機械学習の機能はレシピ(Recipes)と 決定(Decisions)という2つの機能があります。- レシピ(Recipes)
いわゆるレコメンデーションを実現する機能で、顧客毎に独自のコンテンツや製品のレコメンデーションを作成することができます。
レコメンデーションは様々なバリエーション(アルゴリズム)が用意されています。以下はその一例となります。
・共同閲覧:この商品を見た人はこの商品も良く見ています。
・トレンド:最近よく買われている商品
・スマート バンドル:この商品を購入した人は同時にこの商品も購入しています。等。 - 決定(Decisions)
レシピ(Recipes)は自身でレコメンデーションルールを設定してテストして実行する必要がありますが、この決定(Decisions)を利用することにより、AI に作業を任せることができます。
決定(Decisions)では、顧客や訪問者に関する様々なデータを使用して、最も成果(コンバージョン)を生みやすいプロモーションを予測し、自動的に施策を実行することができます。
- レシピ(Recipes)
- ギア(Gears)
ギア(Gears )は、特定のニーズに基づいて追加できるプラットフォームの拡張機能となります。
ギアには様々な機能やオプションが用意されていますが、例えば以下のような用途に利用されます。
- Marketing Cloud Personalization を他のシステムと統合する
- 再利用可能なテンプレートを活用する
- Marketing Cloud Personalization に保存されている豊富な分析データにアクセスする

Marketing Cloud Personalization を活用し効果を上げるために必要なこと
Marketing Cloud Personalization は、企業が各顧客に対して、パーソナライズされた顧客体験を提供するための強力なツールになります。
リアルタイムにデータを収集し、統合された顧客プロファイルを作成することで、リアルタイムでの個別メッセージング、パーソナライゼーション/レコメンデーション、マルチチャネルでのキャンペーン実行、そして効果測定が行えます。
Marketing Cloud Personalization を最大限に活用することで、企業は顧客との関係を強化し、ビジネスの成果を最大化することができます。
一方で、Marketing Cloud Personalization を最大限に活用するには、長期的な視点での目標設定や達成の為の戦略を検討する必要があり、その実現に向けては以下のような技術的な要素を考慮する必要があります。
- Marketing Cloud Personalization の運用段階において、殆どの作業はクリック操作や簡単な入力操作で利用することができる為、ビジネスユーザーでも扱えるツールとなっています。
しかし、導入時においては、Web 開発に関する高度なスキルが求められます。
例えば、顧客のWeb行動履歴を正確に捕捉するには、Webサイト上に 専用のJavaScriptSDK を組み込む必要があり、取得したい情報や Webサイトの構造を考慮した JavaScriptプログラムの開発が必要となります。
また、導入時だけでなく、運用時においても Web サイトの更新等も考慮する必要もあるため、継続的なプログラム改修が必要となる場合があります。 - 顧客に対するパーソナライゼーションを実施するには、Webサイトの行動履歴だけでなく、購入履歴や製品情報等、様々なデータを Marketing Cloud Personalization に連携し、活用できる状態にする必要があります。
その為、導入時には外部システムで扱われる様々なデータを取り込むためのシステム連携の知識や、取り込んだデータを適切に管理するためのデータエンジニアリングのスキルが必要となります。 - 前述の通り、Marketing Cloud Personalization はマルチチャネルで施策を実行することができるツールですが、例えばモバイルアプリとの統合を考慮した際、モバイルアプリ側にSDKを組み込む必要があるため、モバイルアプリ側の改修が必要となります。
また、メールやLINEでのメッセージングを考慮した場合は、Marketing Cloud Engagement と連携して行うため、Marketing Cloud Engagement の構築スキルも必要となります。
このような技術的なスキルを持ちつつ、Marketing Cloud Personalization の機能も理解している人員を確保することは非常に難しいため、専門の外部パートナーと協力して進めていくのが一般的となっています。
トライコーン株式会社は、Marketing Cloud Engagement のコンサルタントや開発者の認定資格や、Marketing Cloud Personalization の認定資格を有したプロフェッショナルがお客様の導入を強力にバックアップする体制を整えております。
導入段階・運用段階どちらにおいてもお困りのことがございましたらお気軽にご相談ください。
トライコーンでは、グループ企業である株式会社セプテーニ(※)と共に、Salesforce Marketing Cloudの 導入支援・活用支援サービスを提供しております。 デジタル広告代理店として、ウェブマーケティングや運用型広告で20年以上の実績をもつセプテーニと、25年以上にわたるCRM・Webマーケティング支援活動で培ったトライコーンのノウハウを基に、顧客獲得から優良顧客への育成・維持まで、広範囲にわたりお客様のビジネスの成功を支援いたします。
※株式会社セプテーニは株式会社セールスフォース・ジャパンの Salesforce Marketing Cloud コンサルティングパートナーの認定企業です。 ※「Salesforce」「Salesforce Marketing Cloud」「Marketing Cloud Engagement」「Marketing Cloud Account Engagement」「Marketing Cloud Personalization」「Marketing Cloud Customer Data Platform」「Marketing Cloud Intelligence」は、 Salesforce.com Inc.の登録商標です。