もくじ
はじめに
顧客に対してEメール等を利用した情報配信をされているご担当者様の多くは、「この業務は自動化できないか?」「もっと効率の良い方法はないか?」等の課題を抱えられているかと思います。
配信ツールへのデータインポートを手作業で実施している、あるいはデータインポートをする前に配信ツールの仕様に合わせたデータの整形・加工・結合等のデータ前処理を行われている方もいるかもしれません。
今回は、Salesforce Marketing Cloud Engagement (以下、Marketing Cloud )の自動化アプリケーションである Automation Studio について、どのような作業の自動化が図れるか、その機能の概要と特長を解説いたします。
Automation Studio とは?
Automation Studio は Salesforce Marketing Cloud で利用できる自動化アプリケーションです。
外部システムとのファイル転送、ファイルのインポートやエクスポート、データのフィルター(抽出)や SQL を利用したクエリ実行、Eメールや SMS の送信処理等、様々な処理を自動化することができます。
自動化の実行タイミングは、日付・時間ベースのスケジューリング実行、ファイルが外部システムから転送されたタイミングでの実行、API を利用したトリガーによる実行が選択できるため、幅広い用途で活用することができます。
Automation Studio の特長
Automation Studio には様々な特長が挙げられますが、ここでは以下の4つを取り上げます。
直感的なユーザーインターフェース
Automation Studio は、他の Marketing Cloud アプリケーションと同様に非常に直感的なユーザーインターフェース(以下、UI)で操作を行うことができます。
自動化のワークフローの構成は、プログラミング等の特別な知識を必要とせず、行いたい処理のコンポーネントをドラッグ&ドロップ操作で配置し、簡単な入力操作で完了することができます。
マルチチャネルでのメッセージ送信
Marketing Cloud には Journey Builder という、マルチチャネルでの顧客への One to One メッセージングを可能とする自動化アプリケーションが存在しますが、Automation Studio を利用して E メールや SMS、LINE、モバイルアプリへのメッセージ送信を自動化することもできます。
外部システムとのファイル連携、データエクステンションへのリストインポート、フィルター(抽出処理)、メッセージ送信といった一連の処理を Automation Studio で完結することができるため、定期的なメッセージ送信施策は、Automation Studio で完結できる場合があります。
Marketing Cloud FTP ディレクトリ
Marketing Cloud には、外部システムから送信されるファイルを格納することができる FTP ディレクトリ※が標準で用意されています。
その為、外部システムとのファイル連携を行うための中継サーバーやシステム構築をする必要がなくなる場合があります。
更に後述する Automation Studio の機能によって、ファイルの圧縮/暗号解除などの処理を行うこともできる等、充実した外部システムとのファイル連携機能が用意されています。
※SFTPも対応しています。
SQL を利用したデータ操作
Automation Studio で実現できる自動化処理の一つに、"SQL クエリアクティビティ"と呼ばれる SQL を利用したデータ操作機能が用意されています。
この機能を利用することにより、「配信ツールへのデータインポート前のデータ整形・加工・結合等のデータ前処理」を Marketing Cloud 内で自動化させることが可能になります。
例えば、顧客リストデータ、顧客の購買履歴データ、アンケートデータ等を活用したEメール配信を行いたい場合、通常はデータの結合や整形を外部データベース等で事前に行う必要がありますが、それぞれのデータを Marketing Cloud に一旦格納し、SQL クエリアクティビティを利用してデータの結合や整形を行うことができるようになります。
この機能は 他のマーケティングオートメーションにはあまり見られない機能であるため、Marketing Cloud の大きな特長の一つとなります。

Automation Studio の機能
Automation Studio は、"アクティビティ"と呼ばれる特定のアクションを定義するコンポートネントを組み合わせて自動化の設定を行います。
アクティビティには以下のようなものが用意※されています。※利用する Marketing Cloud のエディションやオプション契約により異なります。
ファイル転送 | ファイルのインポート | モバイルの連絡先のインポート |
待機 | 検証 | フィルター |
フィルターされたモバイルリストの更新 | グループの更新 | SQL クエリ |
メール送信 | SMS の送信 | GroupConnect の送信 |
プッシュの送信 | データ抽出 | レポート定義 |
スクリプト | ファイアイベント | データファクトリユーティリティ |
上記から一般的によく利用される以下の8つのアクティビティについてご紹介します。
アクティビティ名 | 機能の概要 | |
---|---|---|
1 | ファイル転送 | 外部システムから Marketing Cloud の FTP ディレクトリ に転送されてきた ファイルの圧縮解除や暗号化解除をします。 または、Marketing Cloud の Safehouse と呼ばれる内部的なファイル格納場所から指定した FTP ディレクトリにファイルを転送します。 |
2 | ファイルのインポート | Marketing Cloud の FTP ディレクトリ、または外部の FTP ディレクトリ にあるファイルを購読者リスト、またはデータエクステンションにインポートします。 |
3 | 待機 | オートメーションが続行する前に一定時間または特定の時刻まで待機します。 |
4 | 検証 | オートメーションで使用されるデータを検証して、意図しない結果の発生を回避します。 例えば、インポートするファイルのレコード数が想定よりも少ない、または多い場合、オートメーションを中断したり、メール通知を送信したりすることができます。 |
5 | フィルター | データエクステンション等に対して抽出の条件を指定し、その条件を満たすデータをデータエクステンションに出力します。 |
6 | SQL クエリ | SQL を使用して、データエクステンション(※1)またはデータビュー情報(※2)の参照やデータ操作を行い、その結果をデータエクステンションに出力します。 ※1.Marketing Cloud で作成できる汎用的なデータテーブル。 ※2.Marketing Cloud で保持される購読者情報やメッセージ送信の詳細ログデータが格納される内部データテーブル。 |
7 | メール送信 | Eメールの送信を行います。メール文面は事前に定義しておく必要があります。 |
8 | データ抽出 | データエクステンションに登録されているデータや、Eメール送信の詳細ログ等のファイルを作成し、Safehouse と呼ばれる内部的なファイル格納場所に出力します。 |

Automation Studio のワークフロー設定
上記で取り上げた"アクティビティ"を利用して、どのように構成することでワークフローを完成させることができるか、一つの例を挙げます。
実現したい事:
日次で連携される外部システムの顧客リスト(Zip形式で圧縮)を利用し、特定の条件で絞り込みを行いメール送信する。
Automation Studio のワークフロー構成イメージ:
1 | スケジュール設定 | 毎日 01:00 にワークフローの開始 |
---|
アクティビティ | 処理内容 | |
---|---|---|
1 | ファイル転送 | 外部システムから Marketing Cloud のFTP ディレクトリに格納された圧縮ファイルの圧縮解除。 |
2 | インポート | 圧縮解除されたファイルを指定のデータエクステンションにインポート。 |
3 | フィルター | 3.でインポートされたデータエクステンションに対して、予め設定した条件でフィルター(絞り込み)を行い、結果をデータエクステンションに出力。 |
4 | メール送信 | 4.で出力されたデータエクステンションに格納されたデータを送信対象として、メール送信。※メール文面は予め定義しておく必要があります。 |

さいごに
今回は Marketing Cloud の自動化アプリケーションである Automation Studio の特長と概要を解説いたしました。
Automation Studio は、データ連携、データ加工・統合、メッセージ送信等の自動化を簡単に実現できる強力な機能となっており、この機能の活用することで煩雑かつ複雑になりがちなメッセージ配信業務の負荷やセキュリティリスクを大幅に軽減することできます。
ワークフローの設定自体もプログラミングの知識は必要なく直感的な操作で容易に行えるため、積極的に自動化に取り組むことができるでしょう。
一方で、複数のデータの結合(紐付け)や集計・加工処理等を自動化したい場合は、SQL を利用したクエリの作成が必要となるため、専門的な知識が必要となる場合があります。
また、Marketing Cloud の初期導入時は Automation Studio だけでなく、Marketing Cloud 全体の設計も考慮する必要性がある為、専門的な知識を有する外部のパートナーと協力して進めることも成功に向けた一つの手段となります。
最適なパートナーをみつけ、Marketing Cloud を最大限活用し、自社の CRM やデジタルマーケティングのパフォーマンスを最大化させましょう。
トライコーンでは、グループ企業である株式会社セプテーニ(※)と共に、Salesforce Marketing Cloudの 導入支援・活用支援サービスを提供しております。 デジタル広告代理店として、ウェブマーケティングや運用型広告で20年以上の実績をもつセプテーニと、25年以上にわたるCRM・Webマーケティング支援活動で培ったトライコーンのノウハウを基に、顧客獲得から優良顧客への育成・維持まで、広範囲にわたりお客様のビジネスの成功を支援いたします。
※株式会社セプテーニは株式会社セールスフォース・ジャパンの Salesforce Marketing Cloud コンサルティングパートナーの認定企業です。 ※「Salesforce」「Salesforce Marketing Cloud」「Marketing Cloud Engagement」「Marketing Cloud Account Engagement」「Marketing Cloud Personalization」「Marketing Cloud Customer Data Platform」「Marketing Cloud Intelligence」は、 Salesforce.com Inc.の登録商標です。